もう20年以上前(またもや、すごいタイムラグ)、印刷会社に勤めていた頃だが、「テープ起こし」という作業をときどきやった。
「テープ起こし」とは、カセットテープに目覚まし時計のベルを聞かせて眠りから覚ます作業、というわけでは、もちろん、なくて(誰ですか、本気で信じたのは)。要は、カセットテープに録音された会議や講演の内容を、イヤホンで聞き取りながらワープロ入力する作業なのだが。
何しろ、録音された声の中には、おそろしく早口の人や、発音不明瞭な人が山ほどいらっしゃるので、テープの音声を聞き取る耳と、ワープロのキーボード、そしてワープロの画面、と、3ヶ所に同時に神経を集中しなければならず、うまく聞き取れなかったりすると、次第に、入力する手にも殺気がこもってくる。
ダン! ダン! ダダダダダッ! ダダン! ダンダンッ! ダダダダダダンッッッ!
と、私の席から、キーボードを叩きつける異様な音が聞こえてきたが最後、上司も同僚も恐れをなして、誰も、周囲に近づいてこなかった(ような気がする)。
最悪なのは、その当時、勤務先と取引が多かった土木関係各社の会議の入力で、何がどう最悪なのかといえば、専門用語が多すぎるのだ。
どんな業界にも専門用語はあるはずだが、土木関係や医療関係(こちらはやったことはないが)の専門用語ほど難解な言葉はあるまい、と、私は未だに信じて疑わない。
「〇〇の、×××のキョーキャクにつきましては………」
キョ、キョーハク? いや違った、キョーカク? キョーカクといったら胸郭? 胸がどうしたって? いや、これも違う。ああ、そうか、キョウキャク、つまり「橋脚」か!
「××の、△△△のクッサクにおきましては………」
ク、クサク? 何が臭いって? いや、クッサクか。「掘削」、つまり掘ることか!
「△△の、〇〇〇の道路のカクフクについてですが………」
カクフク? 道路に書いたり拭いたり? カクフク、カクフク………ああ、「拡幅」!
他にもまだあるが、書いていたらきりがないから、このへんでやめておく。
まったく、連想ゲームかいっっっ!
しかし、専門用語と同じくらい困ったのが、この業界だけに通じる略語の数々。就職活動を「就活」と略したり、育児休業を「育休」と略すような、そんな簡単なレベルではなかったのだ。
ハンコウさん、という呼び名が、やたらと出てくるのだが、誰かの名前だろうと見当がつくだけで、そもそも、どんな漢字を使うのかが判らない。同様に、ホンシさん、という呼び名も多発していて、こちらもハンコウさんと同様、漢字が不明である。
判らない言葉は、とりあえずカタカナで入力していくことにしていたが、それにしても、ハンコウさん、ホンシさん、ハンコウさん、ホンシさん、と連発されるので、気になって仕方がない。
変わった読み方の名前だよなぁ、どんな漢字を使うんだ?
この私の疑問は、聞き取り入力も終盤にさしかかった時点で、やっと明らかになった。
ハンコウさんは、「阪高さん」。ホンシさんは、「本四さん」。
ちなみに、ふたつとも、人の名前ではない。
阪神高速道路公団、略して「阪高」。
本州四国連絡橋公団、略して「本四」。
………アンタら、それって、略しすぎやろっっっ!
この略し方で、即座にフルネームを想像できる人間がいたら、別の意味でコワい。そんなことが可能なのは、それこそ、土木や建築関連の職業についている人間だけだろう。
こうして、すったもんだの果てに、どうにか、業界の専門用語や略語を理解できるようになった頃には、聞き取るべきテープの残り時間は、あと数分になっていたりするのである………。
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「テープ起こし」とは、カセットテープに目覚まし時計のベルを聞かせて眠りから覚ます作業、というわけでは、もちろん、なくて(誰ですか、本気で信じたのは)。要は、カセットテープに録音された会議や講演の内容を、イヤホンで聞き取りながらワープロ入力する作業なのだが。
何しろ、録音された声の中には、おそろしく早口の人や、発音不明瞭な人が山ほどいらっしゃるので、テープの音声を聞き取る耳と、ワープロのキーボード、そしてワープロの画面、と、3ヶ所に同時に神経を集中しなければならず、うまく聞き取れなかったりすると、次第に、入力する手にも殺気がこもってくる。
ダン! ダン! ダダダダダッ! ダダン! ダンダンッ! ダダダダダダンッッッ!
と、私の席から、キーボードを叩きつける異様な音が聞こえてきたが最後、上司も同僚も恐れをなして、誰も、周囲に近づいてこなかった(ような気がする)。
最悪なのは、その当時、勤務先と取引が多かった土木関係各社の会議の入力で、何がどう最悪なのかといえば、専門用語が多すぎるのだ。
どんな業界にも専門用語はあるはずだが、土木関係や医療関係(こちらはやったことはないが)の専門用語ほど難解な言葉はあるまい、と、私は未だに信じて疑わない。
「〇〇の、×××のキョーキャクにつきましては………」
キョ、キョーハク? いや違った、キョーカク? キョーカクといったら胸郭? 胸がどうしたって? いや、これも違う。ああ、そうか、キョウキャク、つまり「橋脚」か!
「××の、△△△のクッサクにおきましては………」
ク、クサク? 何が臭いって? いや、クッサクか。「掘削」、つまり掘ることか!
「△△の、〇〇〇の道路のカクフクについてですが………」
カクフク? 道路に書いたり拭いたり? カクフク、カクフク………ああ、「拡幅」!
他にもまだあるが、書いていたらきりがないから、このへんでやめておく。
まったく、連想ゲームかいっっっ!
しかし、専門用語と同じくらい困ったのが、この業界だけに通じる略語の数々。就職活動を「就活」と略したり、育児休業を「育休」と略すような、そんな簡単なレベルではなかったのだ。
ハンコウさん、という呼び名が、やたらと出てくるのだが、誰かの名前だろうと見当がつくだけで、そもそも、どんな漢字を使うのかが判らない。同様に、ホンシさん、という呼び名も多発していて、こちらもハンコウさんと同様、漢字が不明である。
判らない言葉は、とりあえずカタカナで入力していくことにしていたが、それにしても、ハンコウさん、ホンシさん、ハンコウさん、ホンシさん、と連発されるので、気になって仕方がない。
変わった読み方の名前だよなぁ、どんな漢字を使うんだ?
この私の疑問は、聞き取り入力も終盤にさしかかった時点で、やっと明らかになった。
ハンコウさんは、「阪高さん」。ホンシさんは、「本四さん」。
ちなみに、ふたつとも、人の名前ではない。
阪神高速道路公団、略して「阪高」。
本州四国連絡橋公団、略して「本四」。
………アンタら、それって、略しすぎやろっっっ!
この略し方で、即座にフルネームを想像できる人間がいたら、別の意味でコワい。そんなことが可能なのは、それこそ、土木や建築関連の職業についている人間だけだろう。
こうして、すったもんだの果てに、どうにか、業界の専門用語や略語を理解できるようになった頃には、聞き取るべきテープの残り時間は、あと数分になっていたりするのである………。
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